赤い糸
第10章 壁
「い、痛いです…」
頬を真っ赤に染めてまでわざわざ気を使って報告なんかしやがって
「うるさい、少し我慢しろ。」
嬉しさを爆発させてる俺の顔を見せられるわけねぇだろ。
「…うっ…はぃ。」
唇の感触を忘れていなかった…なんて可愛いこと言いやがったから 勢い任せで璃子の腕を引きソファーから引きずり落として
「あの…」
「まだだ。」
力いっぱい抱きしめた。
おまえは少しパニック気味だからまだ気付いてないみたいだけど
俺の膝の上にチョコンと座って手を背中に回してシャツを掴んでる。
初期設定の璃子さまにとっちゃ上出来。
「もう少し我慢しろ。」
離してしまえばまた距離を取られてしまいそうだから俺はニヤケた顔を隠すように力を緩めることなく璃子を感じていた。
「…ギ…ギブです…」
でもな、その掴んでいた手は俺の背中を叩き始める。
だよな。苦しかったか。
「ハーハーハー。」
乱れてしまった髪を手櫛で直しながら璃子は上目使いで俺を見上げる。
「真っ赤だな。」
「それは京介さんが!」
んで、言わなくていいことを言ってやる。
「ゆでダコ。」
「ヒ、ヒドイです!」
これはこれで悪くはない。
「可愛いなぁ。」
小さくて柔らかくって甘い香りがして
「人を犬みたいに撫でないで下さい!」
「犬ね…なるほどそれも悪くねぇか。ヨシヨシ璃子ちゃん。」
「もう!髪の毛グチャグチャになっちゃいます!」
いつ見ても本当におまえは飽きねぇ。
「ヨーシヨシ。」
「ですから!京介さん!」
つうか…
「…ワアッ!」
やっぱり離したくねぇ。
「おとなしく出来ない犬にはお仕置きだ。」
この犬を黙らせるためには
「ズルいです。」
俺の体すべてで抱きしめる。
…さっきとは違う。大切なものを包むようにそっと柔らかく丁寧に
「無理して思い出さなくていいから。」
「…でも」
「前にも言ったろ?」
「…はぃ。」
俺の気持ちが伝わるように優しく優しく
「なぁ…もう一回していいか?」
そんなことを考えながら欲張りなオレ
「…ダメ?」
璃子はスッと俯いて頬を染めると
「ダメなわけ…ないじゃないですか…」
マジでコイツはありえない。
「じゃあ、遠慮なく…」
今度はもう少し堪能させて
「…んっ…」
どんだけその唇を待ったと思ってんだ。