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赤い糸

第11章 タイムリミット


「色々とご迷惑をお掛けしまして…」

「璃子、もういいって言ってるでしょ?」

蒼空から降り注ぐ紫外線をシャットアウト出来る屋根付きのスタンド席は魔女たちの特等席。

「本当に申し訳ありません!」

その特等席に間借りする璃子は今日も話の中心にいた。

記憶を無くしたことを知った璃子は先日の大会での無礼を魔女たちに謝っているのだけど

「大丈夫よ、璃子は覚えてなくても私たちはアレもコレも知ってるから。」

「そうね、アレもコレも知ってるもんね。」

そんなことで文句を言う人たちじゃない。

「な、何を知ってるんですか?」

「ウフフ、アレもコレもよ。」

だって、私たちはそうやってすぐに真っ赤になる璃子のことが大好きなんだもの。


一通り話終えたあと 私と璃子は練習風景を眺めながら昨日のカレーパーティーの話を聞いた。

「フフっ、キスね。」

「うん…」

記憶を無くした璃子は京介さんとのはじめてのキスの話を頬を染めて報告するんだけど

「京介さん可哀想。」

「え?なんで?」

璃子のすべてを知ってるのに“キスだけ”でお預けを喰らった京介さんを思うとついつい言葉を漏らしてしまう。

「アンタよく考えてごらんなさい。」

そして、恋愛偏差値の低い璃子にもう一度教え込まなきゃいけない。

「あの京介さんがキスだけで我慢してくれたんだよ?アンタその気持ちわかる?」

「…。」

「好きなら抱かれなさいよ。」

「…そ、それは。」

今の璃子には過激な話かもしれないけど

「体を重ねることによって思い出すこともあるかもしれないじゃない。」

あなたたちには時間がない。

「セックスって快楽だけを求めるものじゃないのよ。お互いすべてをさらけ出しての気持ちを重ねるってことだと思うの。」

だってあなたに与えられた時間は

「璃子は心から愛されてたんだから…」

もうわずかしかない。

「万が一アメリカに行くことになったとしても京介さんの気持ちをもっと大切にしてあげなよ。」

「…うん。」

「あの人は璃子のことだけを考えて記憶を無くしてもグッと堪えて向き合ってきてくれたんだから。」

わずかな時間で出来ることをその愛に応えるために注がなきゃいけない。

「璃子!しっかりしろ!」

きっとこんな風に言えるのは私だけだと思うから。

それにしても…今日の京介さんはどうした?

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