テキストサイズ

赤い糸

第11章 タイムリミット

ピンポーンピンポーン♪

「京介さーん!」

ピンポーン♪ドンドンドン!

「京介居るんだろー!」

…あぁうるせぇ!

ガチャ!

「近所迷惑だっつうの!」

いつかは来ると思ってた。

「おじゃましまーす!」

「おぃ!勝手に上がん…」

「おまえ邪魔。」

「は?」

コンビニの袋を両手に持った

「京介、たまにはゆっくり飲もうぜ。」

長谷川さんにこう言われたら首を縦に振るしかない。

「早く座れよ。」

「おまえが指図するな。」

先日、俺はコイツらになにも言わずに球場を後にした。

その後の事故処理を担当してくれたのだろう。

「京介さんはビールでいいですか?」

テーブルにコンビニで売られてる数々の品をところ狭しと並べ

「はぃどうぞ。」

これから始まるのは残念会?それとも説教会?

「いや~腹減った~。」

「おぃ佑樹、それ俺が食いたいって言ったヤツだぞ。」

「そうでしたっけ?」

「直也、おまえ4人で食うんだから考えて食えよ?」

「わかってますって。」

いつもと変わらないバカなメンツの顔がここにはある。

でも、コイツらだって暇じゃない。

長谷川さんは家族が家で待ってるし、佑樹は今デカイ仕事を任されてるって言ってた。

直也は公務員だから早く帰れるかもしれねぇけど、みんなに声をかけ集めてくれたんだと思う。

だから酒がまわらないうちにちゃんと話しとかなきゃいけない。

ちゃんと…

「璃子と…別れた。」

今までコイツらがどれだけ見守っていてくれていたか知ってたから。

「アイツいつまでたっても俺のこと思い出さねぇから面倒くさくなっちゃって…」

「…京介。」

「手も出せねぇし…この歳にしてキスだけって可笑しいだろ。」

胸の内とは反対な台詞をズラズラと並べると

「俺たちの前でそういうのいいから。」

長谷川さんが俺の肩を叩く。

その手はひどく重くて心の悪いところを殴られているようで

「…ちゃんと別れた。これで璃子も心置きなく好きな道に進めると思う。」

ダメだな。学生の頃から汚ねぇとこも弱いとこも見せてきたコイツらの前じゃ

「俺…頑張ったよ。」

格好なんてつけられない。

「京介さん…」

「なんでおまえが泣いてんだよ。」

「だって…」

「直也…おまえには一番感謝してるよ。」

「京介さんっ!」

嘘なんてつけなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ