
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第13章 溢れる想い
さり気ないパフュームのいい香りがして、
その清涼感が私を更なる安眠へと誘う。
それから私は大柄な男におぶられ、
エレベーターホールへ出た。
火照った私の頬に男の少し冷たい首筋が当たる。
密着した背中から伝わる温もりがしっとり馴染んで
落ち着くような ――
その一方で、何処か生々しくて、
ムズムズと居心地が悪いような、
落ち着かない気分になった。
『―― それではお気をつけて。くれぐれも
送り狼にはならないで下さいね?
彼女は当店のアイドルですから』
『分かってるよー。んじゃ、おやすみぃ~』
エレベーターの扉が閉まったのが気配で分かった。
私とその男を乗せたエレベーターは、
どんどん上昇し ―― しばらくして停まった。
翌朝、小鳥のさえずりと共に目覚めたのは
見知らぬ部屋の誰かのベッドだったけど。
『フィガロ』で酔い潰れた私をココへ連れて来た
あの男の人は既にいなくて。
ベッドサイドのテーブルへ彼からの書き置き
メモが残されていた。
”おはよう。二日酔いは大丈夫か?
もう卒業が確定してるお前にとっては
暇つぶしにもならんだろうが、
学校へは出てこいよ。
―― 鮫島 ”
