
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第13章 溢れる想い
2月14日 (*) 晴天
今日はセントバレンタインズデー、です。
街中、真っ赤なハートと様々なチョコレートで
埋め尽くされる恋人達の大イベント。
ココ、港南台高校でも、
朝も早うから色めきたった生徒達の間で、
愛の告白とプレゼントの交換が行われているが
絢音の機嫌はド底辺だった。
階下の遊歩道を女生徒達に取り囲まれた
竜二が行く ――
その竜二の手には抱えきれないほどの
プレゼントの包み。
(もうっ! なぁによっ、デレーっと鼻の下
伸ばしちゃって、大の男が情けない……)
絢音は窓辺から離れ自分の席へは戻らずに
教室後方の棚から自分の通学カバンを取って
出入り口へ向かう。
「あっれー、久しぶりに来たのに、もう帰るのかぁ?」
と、言ってきたのは久住だ。
「悪い?!」
と、久住を睨みつける絢音。
「俺に当たるなよ。マジ、機嫌わりぃのな」
その時、出入り口の戸口に現れた1人の
可愛らしい女子が舌足らずの口調で
『まぁくぅ~ん』と久住を呼んだ。
「あー、沙奈ちゃん」
「はい、コレ、約束の手作りチョコ」
「わお、すっげー感激! ありがとな」
