
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第14章 大好きなのに……
同じ日の夜 ――、
新宿2丁目クラブ『コミットプレイス』
今宵はバレンタインスペシャルナイト!
学校じゃ”ダサ男”とあだ名されるほど、冴えない
中年オヤジを装っている竜二もここでは素に還って
四方をイケメンに囲まれ、超ハイ(アゲアゲ)な
気分で踊っている。
人はそんな彼を ”2丁目の種馬”と呼ぶ。
絢音も来ていて、そんな竜二を仏頂面で見ながら、
ドリンクカウンターにもたれコーク・ハイを
チビチビ飲んでいた。
『―― その気があったらまた2丁目へおいで?
たいていオレは《コミットプレイス》って
クラブにいる』
ま ―― あんな社交辞令にホイホイ乗って
来ちゃった私も、私だけど……にしたって!
あんな気のあるような言葉で人を誘っといて、
自分はキレイどこに囲まれいい気なもん
じゃない?!
それに、めっちゃ楽し気な竜二にも超ムカつく。
何気に自分は蔑ろにされているようで、
絢音はかなりヘソを曲げていた。
その時 ―― 『ハ~イ』と、声をかけてきたのは
隣に座ったブロンド短髪・チビT・マイクロミニの
ニューハーフ。
「ハ~イ、ごきげんよう。良かったら、何か奢らせて
くれない?」
「ありがと、じゃ、バドワイザーを」
そこへ、バーテンダー・のアルバイト中の久住が
邪魔に入った。
「あー、ごめんよ、ミンキーちゃん、こいつまだ未成年
なんだ」
「あらそう、ざ~んねん」
「ちょっと柾也、邪魔せんといてくれるー?」
「将来有望な特待生が、こんなとこで夜更かしなんか
してていいの?」
「お説教はたくさん。何なら、柾也が今夜の相手
してくれる?」
「じょーだんは止めてくれ。鮫島と沙奈ちゃんに
殺される」
「……いいわねぇ、皆んな幸せそうで……」
妙に実感がこもった、そんな絢音の言葉に
久住はちょっと眉をひそめ。
「んっと、素直じゃねぇんだから……」
「大きなお世話ですぅ」
「んな、ぐだぐだ悩んでんなら、思い切って告って
見たらいいじゃん」
「告る? 誰が誰によ」
「あのな……」
