
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第3章 導入部・その①
足早に3ーSの教室を目指す、
理玖・まりえと幼なじみの渋谷あつし。
「――ったく、絢は大ばかだ」
「理玖ちゃん……」
イマイチ状況が掴めないまりえはあつしに訊ねる。
「一体何がどうしたの?」
「……妊娠してるんだ」
「えっ ――」
ペロッと口を滑らせたあつしに理玖が声を荒げる。
「あつしっ!」
「ごめん」
「大丈夫。私、口は貝より固いって言われてるのよ」
後方の扉から教室内へ入った3人はすぐ
絢音を見付けた。
気配に顔を上げた絢音は、傍らへ跪いた理玖の胸へ
縋り付くよう抱きついた。
理玖は震える絢音の体を優しく抱き寄せ。
「大丈夫、オレがついてる」
「ごめんね、理玖……」
「とりあえず今夜はオレの家へ泊まれよ。
親父は航路上だし、
家政婦のタキさんは休みなんだ」
とのあつしの勧めで、一行はこれからあつしの
自宅マンションへ行く事になった。
