
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第4章 急転直下
「理玖先輩 ――っ!」
額にびっしょり脂汗を浮かべ、苦悶の表情で
ベッドに横臥する絢音。
傍らにはまりえが付き添っている。
急報を受けた理玖が駆け付けた。
「あやっ、一体どうしてこんな事に……」
「―― あのヤブ医者、麻酔もろくにしねぇで処置
しやがったんだ」
歯ぎしりせんばかりに悔しがってあつしが言った。
絢音は激しい腹部の痛みに耐えながら強がりを言う。
「こ、これくらい、へっちゃらだよ。
なんちゃない……」
一刻の猶予もない事は誰の目から見ても明らかで。
理玖は苦渋の決断を下す。
「匡煌叔父さん呼んでくる」
*** ***
**分後 ――。
ただならぬ様子の理玖に促されるまま、
あつしの自宅マンションへ連れて来られた
和泉匡煌はこの場を見てすぐに大体の状況を悟り、
早速絢音の診察にとりかかった。
腹部の触診で栞は軽く触れられただけで
”うっ”と呻いて、顔を歪めた。
「こいつぁ酷い……ったく、一体何処の医者に ――
イヤ、こんな事を平気で出来る奴ぁ世界広しと
そうザラにはいねぇ……*丁目の闇医者に
診せたな?」
「ど、うしても、知られたく、なかったから……
ごめんなさい、叔父さん」
「すぐ楽にしてやるからな、何も心配はいらない」
