テキストサイズ

オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第4章 急転直下

  一時期 ”離婚は時間の問題”とまで言われ、
  完全に夫婦関係が破綻していた両親は、
  娘の一大事に改心したのか?

  残業・出張は相変わらずだけど、
  以前より早く帰ってくるようになり、
  余計に空気が重たくなる。

  非があるのは自分なのに、寄れば父さんと
  大喧嘩になる。

  私の事を庇って父さんに喰らいつく理玖。

  必死に父さんを宥めようとする姉ちゃん。

  ただ、ただ、狼狽えるだけの母さんと近所に
  住む爺婆。
  
  心の中の、恐怖と鬱憤とが ごちゃまぜになって、
  吐き出したくて、
  父さんに喰ってかかっていたのかもしれない。

  このままじゃ、家族が壊れる。
  自分のせいで、家族が壊れて行く。

  姉ちゃんが
  「しばらく東京の珠ちゃんの所へ行ってみる?」
  と言い出した時は、一も二も無く飛びついた。

  何処でも良かった。
  とにかく、ここの家には居たくなかった。
  
  元々は自分が起こした事が原因なんだけど、  
  もう、自分を取り巻く全ての事が嫌になって、
  東京へ出る決心を固めた。

  今休めば出席単位は確実に足らなくなるし、
  卒業に必要な必須科目だって幾つか残ってるけど、
  やっぱり自分のせいで家族が苦しんだり、
  肩身の狭い思いをするのは忍びないから。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ