
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第7章 鮫島竜二、という男
「あぁ、頼むからそんな警戒しないで」
「無理です」
「別に獲って食いやぁしない(美味しそうだけど)」
私は溜息をついて、笑っているダサ島を見た。
「普通、あまり知らない子に食事なんて奢らない
でしょ? それに、明日も朝早いんで、早く休み
たいんです」
「帰りはちゃんと送るし、キミには今日は色々と
世話になったから……」
さっきから”世話になった”って、そればっか。
益々怪しい……私のアパート突き止めて
何かする気?
……怪しすぎる
「いいえ。やっぱり結構です、お気持ちだけで。
失礼します」
一礼して、身体の向きを変えて歩き出した私に、
ダサ島が声を掛けた。
「もしも、非常勤講師ってのは、世を忍ぶ仮の姿だって
言ったら、キミは信じる?」
「じゃ、真の姿はひょっとして正義の味方か何か?」
「おぉ、それもイイねぇ~」
「アホくさ」
呆れつつも足を止めダサ島をチラリと見た。
「世の中、どんな所に大きなビジネスチャンスが
転がっているか分からない、とは思わないか?」
ダサ島がニヤリと笑う。
女子の好奇心を微妙に擽る、ミステリアスな
言葉。
いくら、世を忍ぶ仮の姿だからだと言っても、
こいつだって一応は見識ある大人。
常識外れな暴挙には出ないだろう……。
「……私、物凄く食べますよ」
ダサ島からのお誘いをオッケーした。
