
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第7章 鮫島竜二、という男
「―― 何が食べたい?」
「美味しいお肉」
うん、やっぱ人の奢りでたらふく食べるなら
肉きゃないよね。
「じゃあ、オレが行きつけの店にしよう。おいで」
ダサ島は歩き出した。
私も、後ろに続く。
どーせそこら辺の焼肉屋だろう……と
私は高をくくっていた。
薄給の非常勤講師に、そこまでの余裕はないはず。
が ――、
連れて行かれたのは、高級と名高い焼肉屋だった。
その店に、ダサ島はスタスタ入っていく。
私に見栄を張ってもしょうがないと思うけど?
店内に入ると、マネージャーらしい黒服が
ダサ島に声を掛けた。
「鮫島様、いつもありがとうございます」
こんな高級店で常連なわけ?
教授か誰かと接待で一緒に来たのかな。
うん、多分そうだ。
個室に通されて、向き合って座る。
「何でも好きなのを選べ」
「んじゃ、遠慮なく ――」
とは言ったものの、こいつの懐具合も気になる。
ホントに良いのかぁ? お金あるのか?
「おぉ、じゃんじゃん 頼め」
大人って色々大変だ……と思った時、
扉が開いて店の人が入ってきた。
「鮫島様、本日はご来店ありがとうございます。
とても良い肉が入っておりますが……」
「じゃあ、それを貰おう。後は適当に頼むよ」
「はい。畏まりました」
ちょっと、ねぇっ!
うちに選ばせてくれるんやなかったん?
ナニ勝手に決めてんのよ!
ダサ島が私を見た。
「どうせ食うなら美味い肉の方がいいだろ?」
「え?」
「『うちに選ばせろ』と顔に書いてある」
また、ダサ島に笑われた。
