
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第7章 鮫島竜二、という男
「―― ご満足頂けましたかな?」
「えぇ、もちろん。すっごく美味かったです」
「それはよかった」
ダサ島は店員さんを呼んだ。
「ご馳走様、美味しかったよ。会計はこれで」
店員に手渡すカードに私は目が釘付けに!
……ブラックカード?
しかも、アメックスのやつ。
コイツ……マジ、何者なんやろ?
私の中で『危険人物』メーターがぐぐ、
ぐーんと上がった。
「どうした?」
「へ? ―― あ、ご馳走様でした」
一応、私は頭を下げた。一応ね。
「いいえ、お粗末さまでした。約束通り
お宅まで送るよ、近くの駐車場に ――」
ダメだ! アパートを知られてはいけない!
「い、いえ。ご心配には及びません。まだ、電車あるし
歩いても帰れます」
ダサ島は言葉を遮って断る私を訝しげに見た。
「いや、送るよ。早く帰らなきゃいけないんだろ?
首都高使えば……」
「電車で大丈夫。今日はありがとうございました」
頭を下げて、ダサ島が何か言おうとしているのを
聞かずに店を出て、足早に駅へと向かう。
マジ、あの男何者??
アメックスブラックカード持ってた。
という事は、あのベンツもあいつの車?
私の家まで送ると言った……まさか、送り狼って事
はないだろうけど、あの若さでブラックカード?
怪しすぎる!
あぁいうのには関わらない方がいい!!
”君子、危うきに近寄らず”
でも……新しく決まったバイト先も、
アパートが新大久保だって事もバレている……
やばいなぁ……本意ではないけど、何か護身具でも
身に着けようか?
とにかく早く駅に着こう!
早く構内に入らないと、何か嫌な予感がする……。
