
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第7章 鮫島竜二、という男
胃が消化を始めて、車の心地良い振動と暖かさで
瞼が重くなってゆく……
でも! ここで寝てしまったら、
どこに連れて行かれるか分からない ―― って、
思うのに……
明日も早いなぁ……あ、利沙に**のレポート
返しておかなきゃ……
睡魔に負けて、私は目を瞑った。
*** *** ***
―― あ、れ?
目が覚めて運転席を見るとダサ島がいない。
しかも! ココって東京湾の中央埠頭じゃない?!
一瞬本当に拐われたと思ったが、ダサ島は外で
タバコを吸っていただけ。
車のドアの開閉音で、ダサ島は振り向いて
私に微笑んだ。
「よく眠れたか?」
「はぁ……」
「いつもは何時に起きるんだ?」
「ん~ ―― 大体6時くらいかなぁ」
「早いな、オレは寝る時間だ……」
「あの、ダサじ ――」
危うく”ダサ島”と、言いそうになって、
慌てて口をつぐんだ。
「ハハハ ―― ”ダサ島”ね、オレもかなりのアダ名
付けられたもんだ……」
あ、知ってたんだ……。
「―― そろそろ行こうか」
「はい」
ダサ ―― 改め、鮫島さんが助手席のドアを
開けてくれたので素直に助手席に座ると、
後部座席に置いていた私の荷物を笑いながら
取ってくれた。
「ありがとうございます……」
「そうやっていつも素直だと、めっちゃ可愛いよキミ」
「私は何時だって素直で可愛いです」
「アハハハ ―― こりゃ、負けた」
鮫島さんは笑いながら車を発進させた。
2丁目の**通りの近くからナビをして
アパートの前まで送ってもらい、鮫島さんに
きちんと礼を言った。
「ありがとうございました、肉と送迎」
「いいえ~、仕事頑張って」
「はい、鮫島さんも」
私は少し笑った。
そして、車から降りてアパートに入る。
私が身構えていた以上に彼は悪い奴でも
なさそうだ。
