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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第9章 季節はうつろう


  オレのばかっ! 
  相手はまだケツの青いガキだ、しかも教え子。

  ま、初対面では、そうとは知らず、
  最後までイタしてしまったが。

  絢音はオレの緊急事態など気にする素振りもなく
  (当たり前だが)
  スヤスヤ気持ち良さそうに眠っている。

  今ならまだ、間に合う。

  頼む絢音、起きてくれ。


「あ、いずみー……こんな所で寝てるとマジ
 風邪引くぞー、休むなら保健室にしなさい」

「ん、んン~ン……」


  寝言は返ってきたが、
  絢音はまるで起きる気配なし。

  その間にも息子の方はぐんぐん力を持ち始め。

  オレ自身も絢音から目が離せなくなる。

  ……マジ、ヤバい……。

  そんな気持ちとは裏腹に、
  オレは顔をゆっくり彼女へ近付けていき、
  気が付けば絢音の柔らかい唇へ自分のソレを
  重ねていた。

  ”チュッ”っと、小さなリップ音をたてて唇同士が
  離れたと同時に、
  絢音はやっと目を覚ました。

  うっ! 
  ま、まさか、今のキス、気付いたんじゃ……。


「ふぁぁ~ぁ、良く寝たぁ……ね、ひょっとしたら今、
 私にキスしてた?」


  やっぱ、いくら鈍な奴だって気づくよなぁ……。


「な、何を言い出すかと思ったら、バカも休み休み言え
 これでもオレは教師だぞ」

「だよねぇ~、私の勘違いだったかぁ」

 
  へ? 気付いて、ない?

  それはそれで問題だぞ、絢音。

  これじゃ、たとえ寝込み襲われても突っ込まれでも
  しない限り気付かんだろ、お前。


「じゃ、センセ、私そろそろ教室戻るね」

「あ、あぁ、気を付けてな」


  絢音が出て行った昇降口を見つめ深い溜息をついて
  自己嫌悪に陥る。

  何とごまかそうと、ひと廻りも年下の教え子に、
  欲情しキスしちまったのは紛れも無い事実だ。

  多分これから先オレは、絢音と顔を合わせる度、
  さっきのキスを思い出すんだろうな。

  かなりしんどいぞ。大丈夫か? オレ。

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