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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第9章 季節はうつろう


「ナイフは没収だ」

「それは私のよ、返してっ!」

「いいか、こんなもん人に向けるって事はな ――」


  と、ナイフの刃先を絢音に突きつけた。


「うわっ、危ないじゃない」

「自分が刺されても文句言えねぇんだよ! 
 良く覚えとけ」


  そう言って立ち去る竜二の不意をついて、
  絢音は技を仕掛けるが、いともあっさり返り討ち。


「あ、イタタタ ――」

「ったく、親御さんが泣いてるぞ」

「!!……」


 ***  ***  ***



  ―― そして、現在。


「あっ ―― あの時の……」

「フフフ……やっと、思い出してくれた」


  あの後、むしゃくしゃしながら自宅へ帰ったら、

  当時はまだ健在だった祖父と実父が泣きながら
  絢音を出迎えてくれたんだそう。

  当時は祖父と父が小さな学習塾を経営しており、
  ちょびリッチで何気にムカつくって理不尽な
  理由から、学校ではたいそうイジメられていた
  そうだ。

  だから、心の中では2人の仕事を本当に誇りに
  思っていても。
  イジメにあってる反動で素直になれず、
  祖父と父にはかなり衝突していたと打ち明けられた


「あの時、おじいちゃんってば何て言ったと思うー?」

「ん?」

「今度、家出する時は行き先くらいメモに書いて
 残していけって。
 どんな親でも子供がいきなりいなくなったら、
 堪らなく心配になるんだからって。
 家出するのに行き先メモして行ったら意味ない
 のにねぇ」

「桜羽先生らしいや……」

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