
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第9章 季節はうつろう
「何ボサッとしてやがんだ。構うこたぁねぇ、
2人まとめて片付けちまえ」
自分達の意思で、というより、佐渡山の剣幕に
気圧されて仕方なく、という感じで仲間の男達が
一斉に竜二と絢音へ殴りかかってゆく。
それを、竜二は絢音を庇いながら余裕で応戦。
絢音は自分も竜二の助けになりたいのに、
竜二がそうはさせないのでイラつく。
「ちょっと! 私にも少しはやらせてよ」
「アホ、こいつら性根は腐ってても本職のヤクザだ、
下手に手ぇ出して怪我でもさせたらオレは親御さんに
呪い殺される」
「! 竜二……」
「いいから、お前は大人しく守られてろ」
そうして、男達は竜二1人にあっという間に
KOされた。
追い詰められた佐渡山は仲間へのメンツもあって
今さら引くに引けず、懐から黒光りする38口径の
拳銃を取り出した。
「マジ、腐っとんな……それ撃ったらお前、
前科モンやぞ。親分も道連れにしてな」
※注略~改正・暴対法では”使用者責任”
というモノで、実際悪事を働いた組員の他、
その組員が属する組織の兄貴分や親分も
刑罰の対象となる。
竜二は絢音を自分の後ろへ下がらせた。
「懲役怖くて極道なんぞやってられんわっ。
死に晒せ、悪徳教師っ!」
佐渡山の持っている拳銃をめぐって、
竜二・絢音・佐渡山の3人で
揉み合っているうちに、銃が暴発(誤発射)
たまたま運悪く、その弾丸は竜二の腕を掠め、
鮮血が!
「りゅ、竜二ぃっ!」
竜二は傷ついた腕を手で押さえてその場に
へたり込んだ。
まさか、本当に撃つ事になろうとは
思いもしなかった佐渡山は、
その痛みに震えながらも自分を睨みつける
竜二に怯え立ち尽くす。
仲間達も同じく複雑な表情で動けずにいる。
「―― あんたら、よくも……ただじゃおかない」
まるで人が変わったように
憎悪のこもった目つきで佐渡山を殴り倒し、
その上へ馬乗りに跨って、佐渡山の顔めがけて
何度も何度も、固く握りしめた渾身の拳を
打ち付ける絢音。
