
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第10章 その時、2人は……
「よう絢ちゃん、ほんに久しぶり」
「ア、大和田の伯父さん……」
そして絢音はねじり鉢巻きの男を見て。
「ほんなら、こっちは辰兄?」
「なんや、忘れとったんかいなぁ。
赤ん坊の頃はオムツまで替えて
やったのにつれないなぁ」
「アハハハハ――」
「――ホレ、2人ともぎょうさんすくってぇや」
ねじり鉢巻きの辰兄が絢音と反町に
紙の張ったポイと呼ばれる物を手渡した。
これで金魚をすくうのだ。
器へ少しの水を入れて絢音はポイを水槽へ浸した。
大胆にすくおうとする反町と。
慎重に狙いを定めて金魚をすくう絢音を見て、
蝶名林が
「2人の性格が良~く出てると思わない?」
と、笑った。
結局、絢音が4匹、反町が5匹の
金魚をGETした。
持ち帰り用の袋へGETした金魚を入れてもらい、
子供のような無邪気な表情でそれを覗き込む
絢音を見て、久住もまた嬉しそうに
目を細めた。
「早速金魚鉢買わなきゃ……」
境内最奥の本堂で参拝を済ませ
再び露天見物へ戻ると、
家族でやって来ていた鮫島、
その弟・伸吾、息子の海斗とも会った。
