幸せの欠片
第14章 幸せの時間
“家に連れていくと、今度は俺が帰したくなくなるから“
相葉さんは苦笑気味にそう言って、落ち着いた和食の店に俺を案内した
普段、食事なんて口に入ればいいからと興味も執着もないけれど
こうして相葉さんが色々と俺を連れ出してくれるようになってからは、多少なりとも食べる事に楽しみを見出だすようになった
彼女とだって、色々な店に行った事はある
なのに、そのどの1つも思い出せない
「どうしたの、笑ったりして」
無意識に口角が上がっていたらしい
相葉さんに不思議そうに聞かれるまで気付かなかった
「あ、うん。不思議だなと思って」
「不思議?」
「うん。俺も色んなお店行ってた筈なのに、何も覚えてなくて。
…でも、何故か相葉さんが連れて行ってくれた店ははっきり覚えてるなって」
…何でだろうね
曖昧に笑いながら相葉さんを見ると
「え…」
相葉さんが口を抑えて、顔を赤くしていた
「相葉さん?」
「その無自覚の殺し文句、狡いよ…」
「え?」
「だってそれ、俺を特別だって言ってるだろ」