幸せの欠片
第14章 幸せの時間
軽く触れてる筈の背中に回された手は何気に強引で
だからと言って別に拒否する理由もないから、相葉さんに促されるままにまた車に乗せられた
「ご飯、食べに行かない?」
車に乗せた時点で帰す気なんかないくせに
「このまま帰るって言ったら?」
「聞こえない」
相葉さんはわざとこっちを見ないで、口角を上げている
その子どもみたいな口調に思わず吹き出してしまった
「でも、今日は泊まらないよ」
さすがに2日帰らないのは避けたい
洗濯物もあるし、流しに置きっぱなしの食器もある
「大丈夫。それは分かってるから」
ハンドルを持たない方の手が、右手に重なった
乾いた手のひらが心地好い
離したくない、なんて思ってしまう
「今日はちゃんと送る。…かずがまた、帰りたくないって言ってもね」
ー…そうだった
昨日は自分が “帰りたくない“ と言ったんだ
揶揄うように言われ、顔が熱くなった
自分を棚に上げて、何を言ってるんだろう
「今日は…言わない」
あまりの恥ずかしさに、下を向いて小さく呟く俺を見て
相葉さんがクスクス笑うのが伝わった