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幸せの欠片

第15章 変わる。


白い無機質な壁

消毒薬の匂い

閉じられたドアの向こうから聞こえる機械音と、人の足音や話し声は酷く不快な気持ちにさせる


だけど仕方ない

ここにいるのは言われたからじゃなくて、自分が決めた事だ

小さく溜め息を吐いて、目を閉じる

このままもう1度、眠ってしまいたいと思った






『最終判断はお前に任せる。だけど受けるだけは受けて欲しい』


電話では埒があかないと踏んだ父親が目の前に現れたのは一昨日の事だった

そこで目にしたのは、10年前とは違う酷く老け込んだ父親の姿


自分の中の父親像とのあまりの落差に一瞬誰だか分からず、戸惑ってしまった

だって電話では、声だけとは言えそんな様子は全くなかったし

むしろ昔と変わらず声に威圧感があったから、そのギャップが余計に大きくて

ー…暫くの間、父親を凝視してしまった




開口一番、「元気か」と告げた父親がチラリと向けた視線は胸の辺り

その視線があまりに解りやすくて、思わず眉をしかめた

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