幸せの欠片
第15章 変わる。
母を死なせた日から
幸せになってはいけない
幸せになる資格なんかない
ずっとそう思って来たし、言われて来た
自分だってそのつもりで生きてきたし
結婚を考えたのだって、“相手がそれで幸せなら“ と言う感情からだった
だけど父親に、検査入院をすると伝えた時に言われた
“自分の為に生きてくれ“ と
ー…良い父親ではないけれど、お前の事は大事な息子である事は変わらない
自分を嫌っていていいから生きて欲しい
その時は何も返事はしなかったけれど
父親の言葉は、酷く胸に響いたのは事実で
…多分父親は気付いていたんだと思う
仕方なく検査を受けるだけで、俺がその先の治療をするつもりがない事に
でも今は?
今、目の前にいる彼と一緒にいたいと思う
先の事は分からないけれど、今はこの人を失いたくない
父親の言葉を信じていいのなら
幸せを求めてもいいのなら
「相葉さん…、聞いて、くれますか……?」
一瞬目を見開いた相葉さんは、しっかりと俺の瞳を捉えると
少し微笑を浮かべた優しい顔で
ー…頷いてくれた