幸せの欠片
第18章 欠片は雨に消える
歩いて行きたい、と言い出したのは俺の方からだった
何となく、相葉さんと一緒に少しでも長く歩きたかったからだ
今回の手術自体はそこまで危険と言う類いのものではないけれど
長い間何の治療も、投薬もして来なかった俺の身体では、持ちこたえられるかどうか何とも言えないと、医師にはっきりと言われている
仕方ない
そこは自業自得としか言えない
だってつい最近まで、自分の身体なんかどうでも良かったのだから
今さらあがいた処で、運に任せるしかないんだ
「自分で持つって……」
「いいから。俺が持つの」
入院に必要なものを詰めたボストンバッグをどっちが持つかで、さっきからこれを何度も繰り返していた
「かずはこれから頑張るんだから、体力温存しなきゃ」
笑いながら、俺の手が届かない位置に鞄を持ち上げる行動が、大事な物を取られまいとする子どもみたいで、おかしくなった
「入院すれば嫌でも温存出来るのに…」
入院して即手術、ではない
手術前の検査やらが控えているし、前日は1日安静だ