幸せの欠片
第18章 欠片は雨に消える
だけど何を言っても相葉さんが譲らない事は想像に難くなくて
バス停に着く頃には、もうバッグを取り戻す事は諦めた
くだらない喧嘩なんてしたくないし、何よりこれが相葉さんの優しさだと思えば悪い気はしない
「…本当に、車じゃなくて良かったの?」
バス停で、ベンチに腰掛けてすぐに、相葉さんが空を見上げた
相葉さんの言いたい事は分かる
今日は朝から分厚い雲が空を覆っていて、いつ降りだしてもおかしくない天気だからだ
「だって車だと病院にすぐに着くから…」
“そうしたら隣を歩く時間が減る“
素直にそう告げると、相葉さんが眉を寄せた
これを言う自分だって相当恥ずかしい
だけど今日は、何故かきちんと伝えたいと思った
「そう言われたら、俺は何も言えない…」
少し照れたように相葉さんが笑う
…そして、ふわりと手を握った
「相葉さん…?」
「嫌じゃなければ、このままで」
嫌なわけ、ない
「嫌、じゃない」
ー…だから、このまま繋いでいて欲しい