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幸せの欠片

第18章 欠片は雨に消える


「かず…っ!」

ふわりと身体が浮いた

誰かが俺を抱き抱えている


…ああ、相葉さんだ

この腕は、相葉さんの腕だ


おかしいな

何で俺は相葉さんの腕の中にいるんだろう


一緒にバスを待ってて

雨が振りだした、って話してて


診察券と保険証を、バスに乗る前に確認しようとしたんだっけ


それから…?


相葉さんに、“ほら“ って見せようとしたら風が吹いて

診察券が飛ばされたのは覚えている


それを拾おうとして、雨の中走り出した




ー…ああ、思い出した

道に落ちた診察券を拾おうとして、俺は……


「かず!しっかり!!」

相葉さんが泣いてる

俺の名前を呼んでいる



泣かないでよ

俺なら大丈夫だから

だってこれから病院に行くんだよ?

ー…手術して、治して

俺と一緒に、生きてくれるんでしょ?





そう伝えたいのに、口が開かない

指1本、動かせない

相葉さんを安心させたいのに、何も出来ない

どうして?

俺は、生きてるのに

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