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幸せの欠片

第3章 気分転換


何度聞いても、不快な声だ

さっさと切りたいけど、切れないのがもどかしい



「だから、行きませんから」

『いつまでそうやって逃げるんだ』

「いつまで?…死ぬまで」

口許を歪めて笑う俺の顔は、さっきまでの相葉さんとメールをしてた物と180度違う

『ふざけてないで、答えなさい』

「だから、行かないと言ってる」

何度も繰り返している電話
何の進展もない同じ会話


もう、うんざりだ

何度掛けて来たって、俺の意思は変わらない


『もう、時間はあまりないんだぞ』


知ってるよ
…そんなのは、あんたよりも自分の方が


「いつも言ってるだろ。俺は行かない」

『和也!』

電話の向こうで相手が声を荒げた


「もう、必要ないんだよ。……父さん」

父さん、と呼ばれたその人が黙り込む

そう言えば “父さん“ なんてずっと言ってなかったっけ

いつも “アンタ“ とか拒絶を顕にしてたから


『和也……』

「もう、掛けて来ても出ないから」

父親に、それ以上の言葉を言わせたくなくて
一方的に通話をシャットアウトさせた

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