幸せの欠片
第1章 雨やどり
その日は、天気予報が外れて突然の大雨に見舞われた
小さな商店街のアーケードの下で、かろうじて雨を凌いではいるけれど
傘なんか持ってるわけないし、バス停まではまだかなりの距離がある
ー…参ったな
本当なら、走ってでもバス停まで辿り着きたい
5分後に迫った到着予定のバスを逃せば、次は1時間後まで待たなければいけない
だけど
全力で走ってもずぶ濡れになるのは必至だし
濡れ鼠になった状態でバスに乗るのも憚られる
通り雨なら待てるけれど
どうもこの暗い雲を見る限り、すぐに止むようには思えない
傘を調達しようにも、コンビニは近くにないし
タクシーが通る気配もない
だからせめて少しでも雨足が治まったら、濡れてでもバス停まで走ろうと心の中で決めた
目の前では、同じように傘がなくて走る人が何人もいたし
ずぶ濡れになって、開き直って歩いてる人もいる
それを見ていたら、自分もいっその事バス停までくらいは走ってもいいのかも知れないとは思えた