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幸せの欠片

第1章 雨やどり


恨めしげに空を見上げた処で、雨が止む訳じゃないけれどつい見てしまう


今日に限って絶対に濡らしたくない大切な物を持っているなんて

…それがなければもしかしたら、多分躊躇しないで走ってたと思う

濡れ鼠だろうと何だろうと、バスに乗るのだって今日みたいな日は似たような人はたくさんいるだろうから



雨足が弱まる処か、更に勢いを増し始めた



「…帰れるのかな」

ぽつんと立ち竦む自分が何処と無く心細く感じて、思わず口に出してしまった




ちらほら同じようにアーケードに避難していた人が次々にいなくなる

20分も立つ頃には、俺の周りには人の影すらなくなってしまって

薄暗い空の下、雨の叩き付ける音しか響かない今

酷く寂しく感じてしまう自分がいた






こんな日は、思い出してしまう



雨の中、びっしょりになってはしゃぐ幼い日の自分と

それを困ったように見つめて笑う母の姿

そして


……けたたましいブレーキ音

何かがぶつかる音と、悲鳴




ー…まだ、雨は止まない

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