幸せの欠片
第4章 友達の定義
人に、何かに執着するのが初めてで、どうして良いか分からない
下手な事を言って失うのが怖いとさえ思っている
「…かず?降りないの?」
なかなかベルトを外さない俺を、相葉さんが不思議そうに見つめる
「あ、うん。えっと…」
降りてしまえ
そうすれば、今までと同じ無関心な日々に戻るだけだ
こんな余計な悩みなんか考えなくて済む
頭の中で正反対の気持ちがぶつかり合い交差する
「ねぇ、かず?」
ふいに、相葉さんが俺の手に自分のそれを重ねた
ふわりとした感触は、何故か同性なのに気持ち悪いとか、そんな事は何も思わせなくて
むしろ手のぬくもりが暖かくて泣きそうになってしまう
「友達なんだから、遠慮するな。…勿論言いたくない事は言わなくていい。だけど、こうしたいとか、何かして欲しい事は何でも言ってくれ」
“あんま突拍子もない事は困るけど“
ああ、どうして
この人は俺が思ってる事に先回り出来るんだろう
「えっと…」
「言って」
「メールとか、今まで通りに……」
今の自分の中で精一杯の願い
「え、変える気なんてなかったけど?」