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幸せの欠片

第5章 衝動


こないだは暗がりで分からなかった山道をゆっくりと車が登っていく

後少しで着く、と教えて貰った時

俺のスマホが着信の振動を伝えてきた


誰だろう

あるとしたら仕事絡みか

そう思いながらスマホを取り出し、表示された画面を見た瞬間

俺は凍りついたように動けなくなった


「電話?…出なくていいの?」

固まってしまった俺に不思議そうに相葉さんが尋ねる

だけど何も返せずに黙ってしまった俺を見て、何か察したのか

「そこに止めるから。俺、外で待ってるね」

俺の返事を聞く事なく、ハザードランプを点灯させて車を寄せた

音もなく振動を続けるスマホ

未だ動けない俺が我に戻ったのは

相葉さんがガチャ、とドアに手を掛けた時だった


咄嗟に降りようとする相葉さんの服を掴んでいた

脇腹の辺りを引っ張られた相葉さんが、困ったように振り返る

降りなくていい、と首を振って相葉さんを引き留める

出るつもりはない

だから相葉さんが降りる必要はないんだ

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