幸せの欠片
第8章 小さな嘘
今までどうやって “恋人“ と過ごしてたんだろうか
相葉さんが特別な存在、と言う事はやっぱりそう言う位置付けになってるのだけど
改めて考えて見たら、過ごして来た筈の日々が思い出せない事に愕然とした
結婚まで考えてた相手なのに、何を話して、何をしたのかまるで覚えていない
それこそ、今と何ら変わらない自分の生活だったと思う
ここに来て、彼女がずっと自分に合わせていたのだと言う事実を知るとか
…今さら、だ
言われた処で自分の生活リズムを崩す気なんか更々なかった
言いたくない事は何も言わないし
口論するのも面倒だからと、余分な言動はいつも避けて来たんだから
それは多分今も変わってない
相葉さんが何も聞かないから、俺は何も言わない
その代わり、自分の意見もあまり言わない
そんな俺といて、相葉さんは何が楽しいんだろうか
相葉さん位にスペックが高ければ、俺なんかじゃなくてもっと似合う人がいる筈なのに
「まだ言うか」
そう言って相葉さんが苦笑した
同じ事を会う度に言ってるからか、最近は軽くあしらわれるようになってしまった