幸せの欠片
第8章 小さな嘘
「俺はかずだから付き合いたいの。それ以上でも以下でもないんだけど」
“俺だから付き合いたい“ と言われれば確かに嬉しくは思う
だけど
いくら考えても、俺にそれ程の価値があるとは思えなくて
「俺の、どこがいいの…」
つい、言ってしまうのは仕方ないだろう
「じゃあ、かずは何で俺と付き合ってもいいと思った?」
相葉さんから逆に聞かれたけど
「初対面から、嫌な感じがなかったから」
と、すぐに答えが出る
人付き合いの苦手な俺からしたら、これは最重要なポイントでもあったからだ
「なら俺も、初対面からかずに惹かれた。…それなら納得してくれる?」
ー…全く
思わず吹き出してしまった
この問答にはキリがないと漸く悟ったのは、10回近く会ってからの事だった
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「あー、また凄い雨だね」
朝からパラパラと降ってはいたけど
一緒に食事をしてる最中に、雨足は本格的になっていたらしい
幸い、傘を持ってはいるけど
風が強くて余り役には立たなそうな感じがする
「駅まで歩く?それか、タクシー呼んで家まで行こうか」
屋根の下から、空を見上げてた相葉さんが俺を振り返った