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幸せの欠片

第8章 小さな嘘


「俺はかずだから付き合いたいの。それ以上でも以下でもないんだけど」

“俺だから付き合いたい“ と言われれば確かに嬉しくは思う

だけど

いくら考えても、俺にそれ程の価値があるとは思えなくて


「俺の、どこがいいの…」

つい、言ってしまうのは仕方ないだろう


「じゃあ、かずは何で俺と付き合ってもいいと思った?」

相葉さんから逆に聞かれたけど

「初対面から、嫌な感じがなかったから」

と、すぐに答えが出る

人付き合いの苦手な俺からしたら、これは最重要なポイントでもあったからだ


「なら俺も、初対面からかずに惹かれた。…それなら納得してくれる?」

ー…全く

思わず吹き出してしまった

この問答にはキリがないと漸く悟ったのは、10回近く会ってからの事だった


*******


「あー、また凄い雨だね」

朝からパラパラと降ってはいたけど
一緒に食事をしてる最中に、雨足は本格的になっていたらしい

幸い、傘を持ってはいるけど
風が強くて余り役には立たなそうな感じがする


「駅まで歩く?それか、タクシー呼んで家まで行こうか」

屋根の下から、空を見上げてた相葉さんが俺を振り返った

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