幸せの欠片
第9章 あめ、くるま、…そして、あか
「かずなり!風邪引いちゃうでしょ?」
おかあさんが、こまったかおでぼくにいった
でも、あめがつめたくてきもちいいから、かさなんかさしたくなくて
「ひかないもん!」
そういいかえしたぼくは、おかあさんのまえをピョンピョンはねながらあるいていた
バシャバシャはねるみずがたのしくて
ようふくがぬれるのがおもしろくて
おかあさんのいうことなんか、しらんぷりしてた
「もう!おうち帰ったらすぐお風呂だからね」
ぼくがたのしそうだからか
おかあさんのかおがこまったかおからわらったかおにかわる
いつもそうだ
おかあさんはさいしょはぼくをちゅういするけど、ぼくがわらってるといっしょにわらってくれるんだ
「ほら、もう分かったから手は繋いで」
チョロチョロするぼくにおかあさんがてをのばした
それをぼくがギュッとにぎると
おかあさんはうれしそうにわらってにぎりかえしてくれる
あったかい、てのひら
ほそいのに、やわらかいゆび
いつもきれいにピカピカしてるつめは、ぼくのだいすきなあかいいろ