幸せの欠片
第10章 いらない
おかあさんの “あか“ がぼくのあたまのなかをうめていく
なにかかんがえたいっておもうのに、あかがいっぱいになって、なにもかんがえられない
「おかあさん、もうおきないの?」
「…ああ」
「ぼくの、せいだね」
ぼくが、かえるをおいかけたから
おかあさんのてを、はなしたから
くるまのおとが、わからなかったから
「ぼくが、わるいんだ」
「違う。かずなりくんのせいじゃない」
おまわりさんがぼくをギュッとした
「ぼくが、おかあさんを…」
とまっていたなみだがまたでてきた
ジュースがぼくのてをはなれてゆかにおちる
「かずなりくんは悪くない。不幸な事故だ」
だけど
おかあさんは、もうおきない
“おはよう“ っていわない
ごはんもつくってくれない
わるいことをしても、おこってくれない
「…お母さんに、会いに行けるか?」
おまわりさんのことばに、すぐにうなずいた
謝らなきゃ
おかあさんに、ごめんなさいしなきゃ