幸せの欠片
第11章 精一杯の勇気
決心した気持ちとは裏腹に、玄関の前に着いてもドキドキする心臓が治まる事はなかった
むしろ、さらに鼓動が早くなってる気がする
中に入って靴を脱いだら、吐きそうなくらいに心臓が痛くなった
緊張しすぎなのは分かってるけど、自分でコントロールが出来ない
「かず?…なんか、調子悪い?」
ああ、また相葉さんを誤解させてしまった
倒れた一件から、相葉さんは俺の顔色や行動を細かく見てるようで
少しの変化にも過敏に反応してしまう
「そんな事、ない」
だから首を横に振って否定するけど
「無理はさせたくないんだ。本当に平気?」
そう簡単に見逃す人じゃなくて
ー…早く言え
自分で自分に言い聞かせる
心配が高じて “送るから帰ろう“ と言われる前に
「あの、さ」
「うん」
まともに顔を見ては言えないから、ジャケットの裾を摘まんで下を向いた
「今日…、帰りたくない」
何とか絞り出した声は、相葉さんに届いただろうか