幸せの欠片
第2章 再会
1時間くらい、そこに座っていただろうか
何を考えるでもなく、ただガラスの向こうを歩く人をぼんやりと眺めていた
忙しそうに早歩きのサラリーマン
楽しそうに会話しながら歩く女性たち
スマホを弄りながら器用に人を避ける若い子
行き交う人を何となく目で追っていたら、1人の男と目が合った
見た事があるその顔をつい、凝視する
彼もまた、少し驚いた表情を浮かべてから
その顔が笑顔に変わって
何の躊躇もなく店の中に入ってきた
そして、俺の席の前まで来ると
「二宮さん、ですよね」
見覚えのある柔らかい笑顔を俺に向けた
この人は確か
あの大雨の時に会った人だ
初対面で、いきなり一緒に食事までした人
「…相葉さん」
その名前は、今日まで忘れる事がなかった
「良かった、合ってた」
彼の名前を口にしたら、ホッとした顔を浮かべた
「あ、誰か一緒かな?」
だけどすぐに、反対側に置かれた手付かずのカップに気が付いて
彼は他の席を探し始めた