自分であるために
第4章 俺の過去話
「それから高校は数少ない私服高に行った。兄二人の末っ子で母親にとっては念願の女の子だったみたいで、女の子らしくしてる間は喜んでくれていたけど、高校に入って、バイトして、今みたいな格好になれば喧嘩ばかりになったよ。でも俺は俺らしくいたい。それだけなんだ。それだけなのに何で叶わないのかな」
「京は京らしくいたらいいのよ。大丈夫、これからはアタシが京の味方でいるから」
「じゃあ、薫の話、聞かせてよね!」
「さあて、お風呂でも入ってくるかしら」
「ちょっ! 逃げるの?!」
「覗かないでね~。イやんっ」
薫はそう言うとお風呂へと逃げた。まぁ、いいか。これからきっと薫との付き合いは長い。またいつか薫が話してくれる日が来る日まで。急ぐ必要なんてない。
今夜知ったこと。否定をせず話を聞いてもらえることがこんなに力強いんだということ。心が少し軽くなったような気がした。俺は薫の飲みさしの缶チューハイに手を伸ばした。