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自分であるために

第4章 俺の過去話

「俺はさ、普段から変わらない。俺は俺でいたい。それだけなのにさ、人と違うってだけで人は異物として扱う。昔から男の子の服装、おままごとやお人形遊びより、おにごっこやドッジボール。幼い頃はそれでも良かった。けれど年齢を重ねるごとに違和感は増えた。得体の知れない自分の体の変化、男の子の目線が気持ち悪くなった。修学旅行は人と同じお風呂に入るのが嫌で欠席した。それでもさ、それでも……」

「大丈夫。今夜は長い。アタシが今までの京のこと全部聞いてあげるし、アタシの話もするわ。たくさん泣きなさい。今までの毒、吐きなさい」

 薫はふわりと俺の頭を撫でてくれて、頬を拭ってくれる。あぁ、なんて安心感なんだろう。

「俺だって女の子になろうと努力もした。中学生までは母親の買ってきた可愛らしい洋服を着たり、ファッション誌を読んだり、女の子とショッピングやカラオケにプリクラ。告白してくれた男の子と付き合ってみたりもした。

けれど、ダメだった。唇を重ねられた瞬間に突き飛ばして、俺にさわんな! ってキレてしまった。その男の子モテてた子でさ、偶然その現場を見てた女の子がいて、次の日からイジメの標的だよ。クソだろマジでってその頃は笑い飛ばせなかったなぁ……」

「アタシがその場にいたら京の変わりにクソだろマジでって言ってやったのに」

 薫は冷蔵庫の中の缶チューハイを飲んでいる。

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