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自分であるために

第5章 アタシの過去、出逢った俺

 人には会いたくなかった。だから表通りとは違う裏路地を歩いていた。裏路地の奥に人影が見えて、下品な笑い声が聞こえた。

「おぉ~お姉さん、いい胸してるじゃん」

 押し倒された女を囲む数人の男。涙を流しているのに力強く男たちを睨みつける女。

 不揃いに切られた髪、はだけたさらし。かっこいい服装。その姿にアタシと同じなんだって一目で分かった。それ以上に京に抱いた感情。黒いことだらけな世の中なのに生きるためにもがく彼女は、この世で見たどんなものより美しい。

女の子の心のアタシは、同性しか好きになれないと思っていた。だけど初めて性別なんてどうでもいいと思えた。

「おい! テメェら何してんだ!」

 アタシの体は考えるより先に動いたよ。こんな男たち怖くもなんともない。京を守るためならアタシはなんだって出来る。そんな気がした。

 一目惚れって、運命って信じる? 

 ねぇ、京? そんなことをアタシが言ったら京はアタシを笑うのかな? 嫌いになるのかな?

 京がアタシを信じてくれたこと。過去のことを話してくれたこと。とても嬉しかったよ。

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