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自分であるために

第11章 アタシの気持ち

「父さん、大切な話がある」

 父親が出ていってから少し経ってから、父親のいる病院に行った。父親の仕事が終わると、一人暮らししている俺の部屋に来てもらった。

「どうした?」

「アタシ、医者になろうと思う。今までは、顔色伺うために無理矢理、学校に行って、嫌々勉強してた。だけど、誰かの助けになれる仕事って凄いんだってことが今なら分かる。好きにしろって言われた時、ファッションやメイクのそういう分野に行くことも考えた。だけど、アタシはアタシにしか出来ないことを考えたい」

「ありがとう」

「父さんのためじゃないから。それにね、父さんには悪いとは思うけど、いつか女の子になることは諦めない。ごめんね」

「……そうか。お前の好きにしろと言ったのは、俺だ。止めたってやるんだろう? もう、いいよ。分かった」

 認めてくれつつも、父親は複雑な顔をしていた。

「ありがとう。さ、久しぶりに親子二人なんだしさ、お酒でも飲もうよ!」

 その夜は、飲み明かした。父親は、今までの反省やらを初めて語っていて、アタシがどんなアタシでもたった一人の子どもにあることにはかわりないと言ってくれた。そのことがとても嬉しい夜だった。京に出逢えて良かった。伝えたいアタシの想い。隠したままじゃない。後悔しないように今、伝えよう。

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