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昭和回想録

第3章 誰よりも・・・。







さらに優子は言葉をつまらせながら続ける。


    「私・・・お父さんがいないでしょ・・私

たちをおいて女の人のところへいっちゃったの・・

でも・・

     私には優しくしてくれてたの・・・

一緒に遊んだり旅行に行ったりして・・・

楽しかった・・・

楽しいことばかりで・・・

それが小学3年生の時に・・

 私、何も悪いことしてないんだよ・・・
 
 それなのに・・・いっちゃった・・・

 

でも、お父さんのいない寂しい毎日が

お兄さんに会って変わったの・・・

お父さんがいなくなっても楽しいことが

あるんだなって分かったの・・・。

   だけど

この前・・・

お店で見ちゃって・・・
     
    お父さんみたいに、また捨てられちゃうの

かなって・・・

急に寂しくて

急にいやになっちゃって・・・

    死にたくなっちゃった・・・

でも・・・いいの。

    今は2番でも3番でもいいの。

     お兄さんと一緒にいられること。

     それでも十分にうれしいんだもの。

     だから・・・

     

だから私を捨てないで・・・。 

     
私と一緒にいて・・・

    


おねがいだから・・・・・。」



話し終わると泣き出した。


悲痛な叫びだった。

優子は小さな心から勇気をふりしぼって話してくれた。

俺は何ということをしてしまったのだろう。

優子の今までの生い立ちなどを考えずに、ただセッ

クスだけを考えていたなんて。

か弱いのに、精一杯強がりを見せていたんだ。

俺は思った。

これからは優子だけを見つめていこう。

優子だけを・・・。

優子だけを・・・。






だがこの後におきた偶然が俺を狂わすとは



今の時点ではわかる余地もなかった・・・。









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