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第26章 ちくたく
A「・・・ただいま。 」
「おかえりー、ってあんた
またひとりじゃない。にのちゃんは?」
リビングから顔を出した母ちゃんが
怪訝そうな顔で出迎えてくれた。
A「あー・・・、具合悪いって帰ってった。 」
「だからあったかいとこで
待ってなって言ったのにー!」
やっぱり連れて帰ってくればよかったわー、
と嘆く母ちゃんに、ほんとだよと毒づいてみる。
・・・悪いのは俺なのに。
「あ、じゃあケーキのお礼はしときなさいよ?」
A「ケーキ? 」
「にのちゃんが冷やしてて欲しいって
言うから先に預かってたの。
あとで一緒に食べようねーって
約束したのにー。」
A「・・・。」
「お母さん先に見たけど、
すっごいきれいなチョコケーキ!
あれどこのかしら?」
A「・・・もうみたんかい。」
「崩れてないかの確認よ!
ていうかこの時期にサンタさんのいないケーキ
買うのって意外と大変なんだからねー?
店によっては断られたりするのよー。」
A「・・・そうなの?」
「そうよー、でもちっちゃい時に
クリスマスと一緒にされるのは嫌だとか
あんたがゴネたから、毎年早い時期から
予約してたんだから。」
A「・・・その記憶はある。 」
やだったんだよな。
幼稚園のみんなが、俺の誕生日そっちのけで
クリスマスだーって浮かれてる感じが。
冷蔵庫を開け、中央においてある
水色の箱を開けると、目に飛び込んでくる
"Happy Birthday"の文字。
「・・・優しい子だね、にのちゃん。」
A「・・・うん。」
母さんの言葉に、かずくんがどれだけ
俺のことを思ってくれてたのかを知る。
かずくん、ごめんね。
ほんとにごめん。
