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第2章 始まりの朝には



N side


カーテンのついていない部屋は眩しくて、
太陽がのぼるのと同じ時間に目が覚めた。


ここから引っ越すときは、まさかまたここに
戻りたいなんて思わなくて、ここにつけてた
カーテンは友人にあげてしまっていた。


「また新しいの買わなきゃな。」


口では面倒だと言っても、
でも顔はゆるんでしまう。

またここに住むための準備だと思うと
それだけで嬉しいから。


隣からはまだ大きなイビキをたてて
気持ち良さそうに眠ってる相葉さん。

時々むにゃむにゃ何か寝言を言ってるけど、
「からあげに殺されるぅ…」だの何だの
訳の分からないことばっかり言ってて。

そんな面白い相葉さんをもう少し見てたいけど、
俺が起きてるのに…って、寂しさからくる
俺のいたずら心に火がつく。


「あーいーばーさん。」


名前を呼んではみるけど、でも思った通り
反応はない。

眠りが深いんだよなぁ、この人。

試しに頬をツンツンして見ても、反応なし。
柔らかい髪の毛に触れても、
まだからあげに殺される夢を見てるのか
きゅっと険しい眉をなぞっても起きない。


「そろそろ起きてくれてもいいんじゃない?」


相葉さんが疲れてることは分かる。

急に決まった引っ越しのために、
残業して帰ってきて荷造りをしたり、
休日も返上して準備をしてくれてた。

そりゃ疲れてるよね。
俺は元々荷物が多くなかったし断捨離して
物を捨てて少なくしたりしたから楽だったけど。



俺の我が儘にどこまでも付き合ってくれてる
相葉さんを見ると申し訳なくなる時もある。


それでも、
「そんなの我が儘って言わないし、
 和の本音が聞けて嬉しいから。」
って言ってくれた相葉さんの言葉と
あの笑顔に嘘はなかったから。

もう少し素直になってもいいのかなって思う。

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