痴漢電車
第5章 自分の立ち位置
亘「…」
部屋を出る千佳を
追いかける事が出来なかった
追いかけるべきだったのかもしれない
だけど曖昧な関係
追いかけたっていい事はない
だから…
亘「…はぁ…っ」
♪~(インターホンが鳴る音)
亘「!!」
千佳が戻って来たのかも
早足で玄関に向かうと相手も確かめず
亘は勢い良くドアを開けた
でもそこには…
亘「あ…」
芳恵「なんだ、いるんじゃん」
亘「芳恵…」
そこにいたのは千佳ではなく芳恵だった
彼女に会えて嬉しいはずなのに
残念に思う気持ちもあり
複雑で…
芳恵「電話しても出ないからいないかと
思った」
亘「あぁ…お風呂入ってて…」
芳恵「お風呂?」
亘「うん」
芳恵「そう、なんだ…」
亘「…」
お風呂に入っていて電話に出れなかった
とっさに、そう誤魔化した亘
でもその格好は…
亘「とりあえず上がれよ」
芳恵「うんっ」
その格好はYシャツにスーツのズボン
お風呂上がりに着る服とは
思えなかった
芳恵「…」