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今夜も君をオカズにする

第2章 東七原駅・多目的トイレ

多目的トイレの中はかなり広めに作られていて

2人の人間が中に入っても窮屈ではない

そんな一人で使うには大きすぎる部屋の入口に

コートを脱いだ彼女が立っていた

コートとかばんは壁に掛けられていた

無言で、あずさが半身を引いて

入ってくるように促す

ここは人気のない駅裏

僕の背後にははるか離れた車の通りと

漆黒に染まっていく背の低い山が見えるはず

「入って、早く」

命令と形容詞

いつもと変わらない

淡々とした表情で彼女は僕を誘き寄せた

僕はトイレの中に入る

かちん

と錠前が下りた音がして

僕という男と

奥村あずさという女が

外界から隔離された

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