
溺れてみたい
第3章 三
私は兄弟達に買われて、ここに住んでいるだけ。
素直に言うことを聞いておけば食事も与えられるし、立派な洋服やアクセサリーだって買って貰える。
毎晩抱かれて我慢出来るのも、お金の為だ。
それなのに……好き?笑ってしまう。
「本当に?絶対、奈都の事好きじゃない?」
「ええ。絶対です……」
「良かったぁ……」
ソファに座ったまま、ホッとしながら目を潤ませる。
そんな椎名に驚き、私はまた黙り込んだ。
泣いてる、コイツ……。
気持ち悪いんだけど……。
「絶対に俺以外の奴は好きにならないでね」
でも、何だ。この安心感は。
懇願する様な目でじっと見られながら頼まれると、私は呆然と呟いていた。
「はい……分かりました」
