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眠れない夜を抱いて

第5章 揺れる。


ガーゼで時々押さえながら消毒液をそこに掛ける
と、滲みるのか相葉さんの顔が少し歪む

「痛いよね…、ごめん」

「にのが謝る必要ないから」

俺が受ける筈の傷を自ら受けた相葉さんは、それでも謝る事を拒んだ

「でも」

「だからさ、無理な番にはしたくなかったんだからいいんだって。それにね」

「…それに?」

「本当に番になる時に、この痛みをにのが受けると思ったら、知れて良かったと思ってる」


番になる為の噛み傷の痛みは、αには絶対に分からないもので

殆どの場合、どんなに愛し合っていてもその瞬間は理性を無くした状態で噛む事が多い

それに、そもそもΩが受ける痛みにまで意識を向けるαなんて、滅多にいないだろう

αもΩも、その与えられた性に従うしかないのが当たり前になってるし

…俺だって、今初めて相葉さんに言われて驚いた位だ


「ホント、相葉さんって変わってる」

「そう?」

「噛まれる痛みを知れたなんて、聞いた事ないよ」

両手で傷口を包み、その回りを軽く圧迫させる

その俺の手の上に、ふわりと相葉さんの無傷のそれが重ねられた

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