眠れない夜を抱いて
第5章 揺れる。
「キツかったら止めていいから」
箱を置いたくせに尚、渋る相葉さんを思わず睨み付ける
傷の手当てがキツイとか、俺はそんなにか弱く見えるのか
「手、出して」
ちょっと強い口調になるのは仕方ないと思う
「マジ、引くよ…」
包帯を解いていく俺を心配そうに見つめながらも、諦めたのか相葉さんはおとなしく従った
どんだけ巻いたんだと思うくらい長い包帯を漸く外し、よれてしまったガーゼが現れる
そのガーゼも既に赤く染まっていて、見ない前から傷の深さを感じさせた
「ちょ…っ」
ガーゼを外し、傷を目の当たりにした瞬間、つい顔をしかめてしまった
想像以上に、酷い傷
噛み痕の牙(犬歯)に当たる部分は抉れたようになっているし、他の歯の部分も1本1本がはっきり分かる位に深く噛んである
「…だから言ったのに」
困ったように相葉さんが眉を下げた
未だ止まっていない血が、止血代わりのガーゼを失ってじわじわと手を汚していく
「ごめん」
箱を急いで開けて、無造作に突っ込まれたガーゼを慌ててそこに当てた