眠れない夜を抱いて
第2章 その男、αにつき
「…っ」
腰の辺りに感じる嫌な動きに息を詰めた
モゾモゾと動くそれは、どう考えたって普通じゃない
身体の線をなぞるように這う指と
首の後ろに掛かるクソ気持ち悪い変な息遣い
ああもう!
だから嫌なんだよ、満員電車って奴は
つか、何で男の俺がこうしょっちゅうこんな目に遇わなきゃいけないんだ
触りたきゃ、他の奴触れよ
ちょっと目をやれば、“可愛い“ に属する男もいっぱい乗ってんじゃねぇか
ちくしょう!
こうなったら、こいつの金●蹴り上げてやろうか
そう思って後ろに陣取る痴漢にチラリと目を向けた時
「君…そろそろ発情期じゃない?」
「え…」
「なんかさ、感じるんだよね。フェロモン」
一瞬で、そんな気は失せた
だってこいつがαなら、俺がどう足掻こうが敵う相手ではないから
無意味な喧嘩はしない、買わないに限る
だけど
黙ってるのも悔しいから
「うるせぇ、この変態野郎…」
悪態くらいは吐いたって構わないだろう、と小さな声で呟いて
「へ?」
「え?」
何故か間抜けな返事にこちらの方が驚いてしまった