
眠れない夜を抱いて
第2章 その男、αにつき
「え、何で変態?」
「は?」
てめえが人のケツ触ってたんじゃねぇか
痴漢行為しておいて、違うとは言わせねぇぞ
「ちょ、ちょっと待って!俺じゃないよ?!」
“触ってたのコイツ!“
フェロモン云々ほざいたそいつが、横にいた冴えない風貌のおっさんの腕を掴んで見せた
「え?」
あれ?違うの?
あんなタイミングで、似たような距離で言うから、絶対こいつだと思ってたのに
「俺は触ってなんかないからね!」
「え、あ、…はぁ」
「とりあえず、こいつ駅員さんに突き出すからさ。悪いけど次で一緒に降りてくれないかな」
「えー…」
それは俺に “男のくせに痴漢に会いました“ って恥を掻けって事?
さすがに嫌なんだけど
だけどこのおっさんを許すってのも腹立たしいしなぁ
まぁ、この世界では男だろうが女だろうが
関係ないって言ってしまえばそれまでなんだけど
それにこいつ……
やっぱりαなんだよな
一発で俺をΩだと見抜いたし、逆らわないとこ見ればこのおっさんはβあたりだろう
