眠れない夜を抱いて
第2章 その男、αにつき
「こいつ、痴漢」
駅の事務所に着いた彼は、おっさんを放り投げるように駅員に突き出した
「知らない!やってない!」
投げ出されたおっさんが急に喚きだした
さっきまでのしょぼくれはどうした
ここに来て足掻くとか、ホントどうしようもないクズだな
「あ、証拠の動画撮ってあるけど」
「え?」
なんだそれ
いつの間に撮ってたんだよ
つか
触られてる “俺“ を見せるって、…喋る以上に辛いもんがあるだろ
それこそ公開処刑じゃないか
「ちょっと待て!!」
慌ててスマホを差し出す手を掴んで、駅員に渡すのを止めた
「え、なんで?」
止められた事に、驚きを隠せないように目を丸くしてるけど
「そんなもん…見せんな!」
何で分からないかな
…ああ、そうか
α様は、常に上にいるから分かる筈ないのか
辱しめなんか受けないもんな
すぐにそう結論付けて
「いいから、見せんなって。…俺がやられましたって言えばいいだろ」
結局自分の口から話す破目になるんだから、全く持って最悪じゃねぇか